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【書評・感想】『愛なき世界』三浦しをん「自分の道を行く人」を応援する恋愛小説

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2019年の「本屋大賞」ノミネート作品が発表されました。今年も有名な著者さんたちの作品が10作ノミネートされ、その中から大賞が選ばれます。

その中でも「本屋大賞」ノミネート常連で、超有名作家でもある三浦しをんさん。そんな三浦しをんさんの『愛なき世界』が今年もノミネートされていたので、読んできました。

 

この記事では、『愛なき世界』の個人的レビューをしていきたいと思います。 

 

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愛なき世界 (単行本)

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『愛なき世界』のあらすじや作品紹介

『愛なき世界』あらすじ

恋のライバルは草でした(マジ)。洋食屋の見習い・藤丸陽太は、植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好き。見た目が殺し屋のような教授、イモに惚れ込む老教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、愛おしい変わり者たちに支えられ、地道な研究に情熱を燃やす日々…人生のすべてを植物に捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか!?道端の草も人間も、必死に生きている。世界の隅っこが輝きだす傑作長篇

 

ストーリーは見習い料理人:藤丸と、大学院生で植物学研究者をめざす本村の恋愛模様が中軸になっています。

「なんだか冴えない主人公設定だなぁ…」と思う人もいるかもしれません。しかし、そんな杞憂はいりません。藤丸と本村を中心として、個性豊かなキャラクターたちに支えられながらストーリーは魅力的に進行していきます。

そんなストーリーの中では恋愛模様だけでなく、料理人や研究者に対するリスペクトや、夢を追う人の静かな熱意に満ち溢れています。そんな「自分の道を行く人」を応援してくれる小説でした。

著者:三浦しをんと代表作

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 読書好きなら誰もが知る名作『風が強く吹いている』や『舟を編む』の著者である三浦しをん。感情の機微だったり、恋愛の心理描写などを描くのがとてもうまい作家です。恋愛が絡む作品を書くのもとても上手で、おもわずキュンとしてしまうような描写がたくさんあります。

代表作のジャンルを見ていくと、なにかと「青春」といった要素が多いように感じますね。『風が強く吹いている』はスポーツに打ち込む少年たちの青春を、『船を編む』では辞書を作ることに熱意を持って取り組む人たちを、綺麗な心理描写を交えながら書いています。

 

個人的にも好きな作家さんなので、新作が発売されるたびに読んでしまいますね。

 

風が強く吹いている (新潮文庫)

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舟を編む (光文社文庫)

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まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

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『愛なき世界』の感想

 タイトル「愛なき世界」とは?

まずはタイトルにもなっている「愛なき世界」について。個人的には

  • 植物の世界
  • 研究者(職人)の世界

を表現しているのかな?と感じました。

 

まずは「植物の世界」。これはストーリー上でも出てきていたので納得していただけると思います。

植物の世界では「愛」という概念自体が存在しません。雄しべと雌しべは「愛」という概念を介在させずに、あくまでシステマチックに子孫を繁栄させます。物語のヒロインである本村は、そんな植物の世界に没頭しているのです。

 

もうひとつは「研究者(職人)の世界」。ひとつのことに熱中して、それに全力を尽くすという世界です。

恋愛にわき目も振らず、厳しくて過酷な世界を生きている研究者への賛歌のような小説でした。『愛なき世界』に出てくる研究者はほとんどが研究に没頭しているキャラクターでした。このように「研究者の世界」が愛なき世界という側面を持っているようです。

 

「自分の道を行く人」を応援する「青春小説」としての一面

本作では「研究者の思い」が詳細に描かれます。

  • 実験のミスによる苦悩
  • 研究者として将来も生活できるかという悩み
  • 心から「植物学」という学問が好きだという感情

本作のヒロインである本村は、植物学を研究する大学院生。その本村が感じる苦悩や葛藤を、等身大のスケールで描きます。

 

ぼくは「研究者」という職業がどのようなものなのか全く知りませんでした。多くの読者にとっても「現在の生活とはかけ離れた生活」といったイメージではないでしょうか。

しかし『愛なき世界』を読み続けていると、そんなかけ離れたイメージを思い浮かべる植物学者たちも、ぼくたちと同じように悩みを抱えて生活しているんだ、と気づくことができます。

 

将来に対して不安を覚えることも、自分の好きなことを続けていたいという熱意も、共感できるエピソードではないでしょうか?

 

そんな等身大の本村とともに描かれるのは主人公の藤丸。彼は「料理人(職人)」として生きることを決めて、料理の道を極めようとする若者です。

彼がストーリーでいい味を出しています。すでに「自分の道」を決めている藤丸は、「研究者としての道」に悩む本村にアドバイスを出し続けます。そのアドバイスがいちいち心に染みる(笑)

研究で決定的なミスをしてしまった本村に対して「自分がワクワクする道を選ぶべきだ」と助言する藤丸はかっこよかったです。

 

「研究者」と「料理人」というまったく異なるような世界で生きているような人たちも「自分の道を行く人」という共通点があることも『愛なき世界』を読んでいると気がつきます。

本作全体を通して、そんな「自分の道を行く人」を応援するようなテーマがあったような気がします。クスっと笑うシーンもありながら、地道に自分の道を行こうと決める研究者(職人)たちの尊さに感動します。

 

 

『愛なき世界』の個人的まとめ

 尊い。『愛なき世界』は研究者たちの情熱、苦悩や葛藤が見事に表現されていた作品でした。

 

個人的には『愛なき世界』はとても好きな作品でした。

大きなドラマティックな展開はありませんが、静かに地道に努力を続ける研究者たちが丁寧に描かれたストーリーだったと思います。藤丸くんという植物学初心者のキャラクターがいることによって、難しく感じるような植物学の世界も楽しんで学ぶことができたと思います。

 

『愛なき世界』に登場するキャラクターは、本村をはじめ「好き」という感情を追求しているようでした。本村は植物学に、藤丸は料理に。それぞれ心の奥に感じている「好き」という感情を大切に、ひとつのことに打ち込んでいます。

単に「好きだから」という感情だけで、損得勘定もなにもなく突き進むキャラクターたちに、いつしか自分も「好きなものに熱中したい」という思いが湧いてきます。

 

もしあなたがなにかにくすぶっていて、悩んでいるのだったら、『愛なき世界』はきっとそんな背中を押してくれるでしょう。

 

 

 

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